親の介護を考えたとき、お金の不安は尽きませんよね。2025年、高齢者の数は3,500万人をこえ、そのうち700万人は認知症…と言われています。
自分には関係ない…と思っていても、どんな人も他人事ではありません。
私は祖母を6年間在宅介護をしたあと、有料老人ホームに預けました。
認知症のすすんだ祖母を老人ホームに預けるとき、資金の面で悩まなかったのは祖母が「エンディングノート」を残してくれていたからです。
この記事では
親の資産を知りたい
親が元気なうちに意志を確認したい
財産を教えて欲しい…といったら怒られそう
介護で自己資金が必要になったらどうしよう
老人ホームに預ける経済的な余裕はあるのかな
このような悩みを持つひとにむけて
エンディングノートとは?
どうやって書いてもらったの?
エンディングノートを書く資金的なメリット
エンディングノートで気をつけること
…を実体験を元に紹介します。
この記事を読むと、将来の「介護にかけられるお金」に関するストレスを減らすことができます。
筆者は在宅介護を6年経験した歯科医師です。
普段は、老人ホームで介護の必要な高齢者の歯の治療をしています。
毎日 Twitter(ありがたいことに1万人以上の方にフォローしてもらっています!)で医療と介護の情報を発信しています。
【結論:エンディングノート】認知症の祖母の資金を事前に確認できた話
最重要はエンディングノートでした
私が祖母の資金を確認できたのは「エンディングノート」があったからです。
エンディングノートとはその名の通り、「終活」に関することを書き留めたノートのことです。
資産だけでなく、「死に対する意思」「残された人への思い」を残すことができます。
このノートを祖母が書いてくれたおかげで、祖母の在宅介護が難しくなったときに、介護する側の精神的な負担を減らすことができました。
・祖母の自分史を知ることができた
・親しい友人や知人を知ることができた
・葬儀や遺影についての希望がわかった
・延命についての意思を知ることができた
・資金的に余裕をもって老人ホームに探すことができた
そして今でも、エンディングノートは形見として持っています。
✔︎ 実際につかったエンディングノート
最初は拒否された
祖母にエンディングノートを進めたとき、最初は拒否がありました。
今思うとこれは当然の反応で、誰もが死ぬことなんて考えたくありません。
実際、当時はまだ元気だったので、自分が死ぬことに関しての記録なんてまだ大丈夫…と断られました。
2回目に伝えた時は「なんだ!私に死ねってことか!」怒られた記憶もあります。
とはいえ、若干物忘れが出てきたことが見守る側としては気になっていました。
なんとか穏やかに書いてもらう方法はないかな…とずっと考えていました。
エンディングノートを書いてもらう3つの方法
私は祖母にエンディングノートを書いてもらった方法は以下の3つです。
①:死の準備ではなくより良い人生を過ごすためのノートだと伝える
②:埋めやすい項目から書く
③:一緒に書く
すこし詳しく紹介します。
①:死の準備ではなくより良い人生を過ごすためのノートだと伝える
エンディングノートは死の準備のためだけではありません。
思想や人間関係を振り返ることで、これからどう生きるかを考えることができます。
祖母には「過去を振り返ることでこれからどう生きるを考えよう」とつたえました。
実際に書き始めてからは祖母も「△さんに連絡してみようかしら」「あの荷物は処分しなきゃ」と色々考えていたようです。
②:埋めやすい項目から書く
埋めやすい項目から書く…も有効です。
いきなり貯金や財産、延命に関すること…といった話はネガティブに捉えられやすいです。
そのため埋めやすい項目から書いてもらうことにしました。
祖母が最初に書いてくれた項目は以下の通りです。
過去の住所
親族の命日
親族表(家系図)
友人・知人の名前と連絡先
これ以外にも「公共料金の引き落とし」「ペットに関すること」…のような項目もあるので書きやすい所から書いていくのがおすすめです。
③:一緒に書く
私が祖母に提案したのは「エンディングノートを一緒に書く」ということです。
一人で書きにくいなら一緒にやろうよ…という発想でした。
「あんたはまだ若いのにこんなこと書く必要ないだろう」と言われました。
ですが、人はいつ死ぬかわかりません。
生きている間に自分の意思を残すということは年齢は関係ないかな…と今になって強く思います。
むしろ若い人ほど書いておいた方がよい…とさえ思います。
エンディングノートの更新は1年に一度
以上、3つのやり方で祖母はエンディングノートを書き残してくれました。
とはいえエンディングノートを更新する必要があります。
私はそのペースは一年に一回、年末に決めました。
毎年、年末にエンディングノートを書いてる。私は死なん!という祖母に終活を促すため、一緒に書き始めたのがきっかけ。死ぬつもりがないのは老人も若者も同じ。でも万が一のとき、残された人の悩み事(財産・死生観・連絡先…)を減らせる。それに、自分の軌跡(貯金・思考・交友)を視認できるのもよい。 pic.twitter.com/F7NtF6XIhF
— しろたぬ@モグモグごっくん (@shirotanu_dds) 2021年12月27日
年を越す前に祖母と一緒にエンディングノートを更新する。時間にして30分ほど。
自分の人生を見つめ直す良い機会だと、祖母は言ってくれるようになりました。
3年後には、ほとんどの項目をうめてくれました。
家族にエンディングノートを書いてもらうメリットと注意点
家族にエンディングノートを書いてもらうときのメリット・注意点を紹介します。
資金計画がたてられる
エンディングノートを書いてもらっていると資産が把握できます。
そのため計画が立てやすいです。
・老人ホームへの入居資金
・入院費
・葬儀代
このような、急に起こるかつ出費額の大きいもの…に対しても、対応しやすくなります。
私の場合は、祖母の認知症がすすんで老人ホームに入居するときの資金計画をスムーズに立てることができました。
参考:有料老人ホームに入るならいくらあれば大丈夫?【目安は3,950万円です】
もしものときに「経済的に安心のライン」がわかると、残される側のストレスが大幅に減ります。
すべてを知る必要はない
私の場合、資産に関していえば「老人ホームに入ることができるかどうか」を確認したいという思いがありました。
そのため、祖母が年金の額と貯金の額を書いてくれた時点である程度目処がついたので、それ以上はお金に関しての話はやめました。
例えば自宅は資産になりますが、すぐに売るつもりはなかったので「この家っていくら?」みたいなことは聞きませんでした。
とにかく祖母に気持ちよく、好きなように書いてもらうように意識しました。
本人も書いたいことと書いたくないことがありますよね。
死生観がわかることも…
知らなかった死生観…を知ることができたりします。
親しい家族の中でも「こういうふうに考えてたんだ」ということはあるからです。
エンディングノートには、
介護への希望
告知
延命
お墓
に関する項目があります。
万が一、病気や認知症で本人の意思確認が出来なくなったときにとても役立ちます。
逆を言うと病気や認知症になってからではこのやり方はあまり意味がありません。
✔︎ 告知や延命についてのページ
今のうちにエンディングノートを書くって割と大切なことです。
ネガティブになるときは書くのをやめる
書く本人がネガティブになるときは、無理に強要するのはやめましょう。
なぜなら家族の中で亀裂が入ってしまうから。
祖母の場合は最初拒否していましたが、前向きなノートであることを伝えて理解してくれました。
ですが、人によってはネガティブにしか捉えられない場合もあります。
エンディングノートはあくまで本人の意思で書くものなので、ネガティブなイメージを払拭できない時は一度時間をおくようにしてください。
遺言とは違う
エンディングノートは遺言とは違います。
エンディングノートは紹介したように資産・人間関係・死生観・思い…など幅広く残すことができます。
一方で法的な拘束力はないので、あくまで「希望」です。
相続などに関してきっちり決めたい場合は遺言書を残すように勧めてあげてください。
とはいえ、遺言書は「死後」のことに関してしか書けません。
「生前」のことに関しても書けるのはエンディングノートの特徴です。(例えば財産の管理や介護に対する気持ち希望など)
遺言よりも自分の思いを伝えやすいので、両方うまく活用するようにしましょう。
✔︎ 兄弟がいたら注意
エンディングノートを書いてもらう際、兄弟などの親族がいる場合は注意が必要です。
勝手に進めると、後でもめる原因になるからです。
私の場合は周りの親族に全て知らせてからエンディングノートを書いてもらっていました。
最初からオープンにするほうが、絶対に後からもめません。
エンディングノートで資金と意志を確認しよう【年齢は関係ない】
今回の記事をまとめます。
・祖母が老人ホームに入る時の資金計画に一番役だったのはエンディングノート
・エンディングノートとはその名の通り、「終活」に関することを書き留めたノート
・書くことに最初は拒否があった
・書いてもらった3つの方法 ①死の準備ではなくより良い人生を過ごすためのノートだと伝える②埋めやすい項目から書く③一緒に書く
・エンディングノートの定期的な更新はおすすめ
・エンディングノートは残される家族に安心感を与える
冒頭で紹介したように、2025年には高齢者の5人に1人が認知症…といわれています。人数にして700万人。
つまり、この数倍の人(家族や関係者)が認知症と向き合うことになります。
高齢者に関わる仕事をしていると、現場からは「判断ができるうちに準備しておけばよかった」という家族の声もちらほら聞こえます。
・親の資産を知りたい
・親が元気なうちに意志を確認したい
・財産を教えて欲しい…といったら怒られそう
・介護で自己資金が必要になったらどうしよう
・老人ホームに預ける経済的な余裕はあるのかな
こんな不安が少しでもあるひとには「エンディングノート」は便利なツールです。
家族で話し合って、ぜひ利用してみてください。
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