老人ホームって費用によって「サービスの質」が違うのかな?…と思ったことはありませんか?
この記事では、
・高級な老人ホームだから安心に違いない
・料金が高くなれば老人ホームの質が高まりそう
・親を老人ホームに預けたいけどお金があまりない
・費用が安い老人ホームだとサービスの質が低いのかな
このように考えている方に向けて、
・老人ホームの質は料金に比例するとは限らない
・安くても良質なサービスを提供する老人ホームを見抜く要素
…を解説します。
この記事を読むと、老人ホームに入居する人だけでなく、預ける家族にとっても安心できる老人ホームを選ぶための指針がわかります。
親や身内を「老人ホームに預けたい」または「転居を考えている」…ひとはぜひご覧ください。
>> 「有料老人ホームの探し方・選び方」を知りたい方はこちらをどうぞ。

この記事を書いているわたしは祖母の在宅介護を6年したあと、老人ホームに預けた経験があります。
有料老人ホームから特別養護老人ホームへの転居も経験しました。
普段は歯科医師として、低価格の老人ホームや高級老人ホームにお邪魔して入居する方の歯の治療をしています。
毎日 Twitter(ありがたいことに1万人以上の方にフォローしてもらっています!)で医療と介護の情報を発信しています。
費用の安い老人ホームは高級老人ホームより「質」が低いのか?【料金に比例?】
老人ホームの「費用」で「質」は決まらない
結論、老人ホームの費用で「質」は決まりません。
費用が安いから質が低い…とも限らず、料金が高いから質が高い…とも限りません。
つまり、「サービスの質」は費用に比例しません。
なぜならサービスの質は「費用」ではなく、「そこで働く人」に大きく影響されるからです。
料金の高い老人ホームでも働く人のモチベーションや技術が低ければ、サービスの質は低下します。
どんなに崇高な理念を掲げていても、現場に落とし込まれていなければ意味がありません。
逆に費用の安い老人ホームでも、入居者が満足できるサービスを提供しているところもあります。
とはいえ、費用の高い老人ホームの方が高い利用料をもらっている分、しっかりサービスを行わなければ…というインセンティブが働くのも事実です。
ですが、「費用が高いから大丈夫」と言い切れないことは忘れないでください。
「質」の根幹は「働いている人」
繰り返しですが、老人ホームの質は「費用」ではなく「そこで働いているひと」の影響が大きいです。
入居した後、「そこで働いている人たち」から実際に介護と医療のサービスを受けることになります。
老人ホームの現場には、
・施設長
・ケアマネージャー
・介護スタッフ
・医療スタッフ
といったたくさんのスタッフが日々関わっています。
そのため丁寧な人もいれば、雑な人もいます。相性もあります。また、働いている人の質は「運営会社の方針」や「施設長の理念」に影響を受けます。
ですが最終的には、スタッフ一人一人のモチベーションや技術が「質」に直結します。
働いている介護職の給料はほぼ変わらない
高級老人ホームでも低価格の老人ホームでも、そこで働く介護職の人たちの給料に大きな違いはありません。
介護職の求人をみるとわかりますが、料金の低い老人ホームの方が月給が高い場合もあります。
極論、10倍高い老人ホームだとしても、そこで働く人たちの知識や技術が10倍ではありません。
費用の違いはどこにある?
費用の高い老人ホームと安い老人ホーム…両者の費用の違いはどこにあるのでしょうか。
主に以下の6つです。
①:立地
②:内装
③:食事
④:プログラムの充実度
⑤:オプションの多さ
⑥:築年数や広さ
すこし詳しく解説します。
①:立地
都心のど真ん中、景色のよい海沿い…といった住環境が整っていると費用は高くなります。
東京の高級住宅や、海辺のリゾート地…をウリにしている老人ホームが当てはまります。
②:内装
豪華な内装や、 備え付けの高級家具・食器…といった贅沢品が多くなればなるほど費用は高くなります。
こだわりのインテリアやソファー…も当てはまります。
③:食事
個人の嗜好に寄り添ったメニュー、行事のたびの豪華な食事…などは費用が高くなります。
和洋中から選べたり、シェフを呼び寄せるところも。
④:プログラムの充実度
高級な老人ホームでは歌手が来たり寿司屋を呼んだりするレクレーションがあったりします
フィットネスや温泉、ミニ映画館が付属されているところも。
⑤:オプションの多さ
医療機関との強固に連携していたり対応する介護職員の数を増やしたり
介護保険の範囲外でオプションをつけることができます。
⑥:築年や広さ
築浅だったり部屋の広さが広い場合も料金は高くなりがちです。
庭があったり、耐震性能にこだわっていたりする老人ホームも。
つまりまとめると、家を借りるときと同じで、利便性が良く豪華であればあるほど値段は高くなります。
入居者やその家族の期待が高すぎると…
サービスの質は「サービスを受ける側」によるところも大きいです。
「質」を感じるのは受ける側だからです。
そのため受けられるサービスを事前にしっかり確認しておくのは重要です。
漠然と「これくらい払っているのだから」と期待してしまい、「サービスの質が悪い」と勘違いして老人ホームともめてしまった例もあります。
介護スタッフが精一杯やってても、契約書をよく読んでおらず納得しない家族もいました。
サービスの質を老人ホームに求めるのは当然です。
それと同じくらい、受けるべきサービスの基準を認識しておくのはとても大切です。
老人ホームの「質の不安」を解消するには?
結論、つぎのステップは大事です。
「資料をよみこむ」→「実際に見学する」→「比較する」→「体験する」
このステップをひとつずつおこなうことで、疑問点や不安点をあぶり出すことができます。
さらに、
・望むサービスが含まれていない
・スタッフに清潔感がない
・思ったより部屋がせまい
・周りの住環境がよくない
・夜間に騒音がする
…などの気づきが得られます。
運任せで老人ホームをきめてもうまくいくこともあります。
ですが、このステップを踏むことで、より自分に合った老人ホームをみつけることができます。
資料請求は一括が便利
資料請求は直接老人ホームに電話やメールしても可能ですが、老人ホーム検索サイトが便利です。
検索が簡単で、資料も一括で取り寄せることができるので、手間がかかりません。
効率的に時間を使いたい方はぜひ利用してみてください。
空気感の第一印象は大切
資料を読み込むにしても、見学するにしても、最初の第一印象は大切です。
第一印象や直感は正しいことが多いからです。
「明るい」「いい感じ」といったイメージは好印象です。
逆に、「なんか違和感がある」「暗いイメージがある」このような違和感を感じたら、一度立ち止まることをオススメします。
感覚は個人によってちがいますし、数字で表せるものではないため、軽視されがちです。
ですが、考慮に値する要素です。
スタッフの雰囲気をチェック
見学にいったときのスタッフの雰囲気を確認しましょう。
スタッフの雰囲気で、老人ホームの雰囲気がわかるといっても過言ではありません。
・施設長
・ケアマネ
・看護師
・介護スタッフ
・すでに入居者している人たち
こういった、現場の人たちの雰囲気は大事です。
笑顔があるか、清潔感はあるか、挨拶するか…などで、一定のモチベーションをもって仕事・生活できているかを確認してください。
まれに見学にいったとき、現場スタッフではなく見学担当スタッフが担当することがあります。
そのときは必ず、5分でもよいので現場スタッフと話す機会を設けてください。
参考記事:【老人ホームの見学】見学者が注意すべきポイント 11選【シンプル】
介護スタッフの離職率は高い
介護スタッフは目まぐるしく入れ替わります。
そのため良いスタッフがしばらくしたらいなくなる…ということは多いです。施設長は定期的に変わる老人ホームもあります。
そのため、いまはよくても…という現象は起こりえます。
入居者側で、スタッフの人生をコントロールすることは難しいですが、
「ハラスメントをしない」「無茶な要求(クレーム)をあげない」…など、辞めさせないためにできることはわずかながらあります。
求めるサービスを確認
求めるサービスをしっかり確認しましょう。
サービスの内容をしることで、はじめて「質」を確認することができるからです。
介護サービスの例
・食事の介助は可能か
・通院の同伴はしてくれるのか
・一人につき何人の介護士がつくか
医療サービスの例
・透析への通院は可能か
・胃ろうは対応にしているか
・夜間の痰吸引はできるか
資料請求時・見学時・契約時…とサービス内容を確認できる機会は何度かあります。
後のトラブルを避けるためにも、しっかり確認するようにしてください。
費用の関係ですべてをとれない場合は優先順位をつけるしかありません。
自分なりの「軸」をもって老人ホームを決めることは、万が一失敗したときでも後悔につながりにくいです。
検索した料金と実際の料金のちがいに注意
インターネットなどで確認した料金と、実際の料金が違う場合には注意が必要です。
サービスの質だけでなく、老人ホームへの不信感につながるからです。
たとえば、
・食事サービスは月額料金にふくまれていない
・介護保険のほかに自費オプションが設定されている
は、しっかりと確認することが大事です。
他にも、医療費や入院費は別途でかかります。
この辺りをわかりにくい表記をしている所は、信頼性がうすくサービスの質も怪しい…と考えることもできます。
しっかりと資料を確認し、入居前に施設担当者にも確認しましょう。
体験入居は必須
入院するまえに体験入居をおこなっている老人ホームは多いです。
体験入居することはメリットがありすぎます。暮らしてみると「気になること」は必ずでてくるかたらです。
・清潔感
・夜間の対応
・入居者の人柄
・施設スタッフの日常的な対応
など、住んでみないとわからないことは多いです。
体験入居した本人の感想を聞くことができる(重度の認知症でない場合)のも大きいです。
【経験談】祖母の場合
わたしの祖母の場合は、2つの老人ホームを経験しました。
有料老人ホームと特別養護老人ホームです。
当初は特別養護老人ホームを希望していたのですが空きがなく、空室が出るのを待っている間に有料老人ホームを利用しました。
費用としては、有料老人ホームのほうが特別養護老人ホームに比べて、月額で約2倍ほどの費用がかかりました。
結論、サービスの質に大きな違いを感じませんでした。
特別養護老人ホームの方が「質が低い」と思ったこともありません。
とはいえ、両者ともやや仕事が雑なスタッフさんが祖母の担当になって心配な時期がありました。
たとえば面会時にタメ口で話す、口腔ケアをしてくれない、など…です。
ですが、基本的にどちらの老人ホームにとてもよくしてもらって、感謝しかありません。
まとめ:老人ホームは「安かろう悪かろう」ではない
今回の記事は「老人ホームって費用によって「サービスの質」が違うの?」…という疑問を解説してきました。
結論はシンプルで、
・老人ホームの費用が高いからといって、サービスの質が高いとは限らない
・逆に費用が安いからといって、サービスの質が低いわけではない
…です。
さらに、
・「質」は費用よりも働く人のモチベーションと技術による
・相性による部分も大きい
・費用の差は立地、内装、食事、プログラム、オプション、築年数や広さ…の差
・事前にサービスの質を確認することが大事
・「資料をよみこむ」「実際に見学する」「比較する」「体験する」で老人ホームの質は確認できる
といった内容を、実体験をふまえつつ解説しました。
終の住処である老人ホーム。その選択に失敗すると「経済的」にも、「時間的」にも、「精神的」にも多大な損失になります。
これらの損失を避けるには、すこしのひと手間をかけるだけです。
質の高い老人ホームを選ぶために、
希望する条件を明確にして…
しっかり精査する
…をぜひ試してみてください。
親や身内を「老人ホームに預けたい」または「転居考えている」…という方の参考になれば嬉しいです。
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