急いで決めなきゃいけないことなのに、失敗できないこと…ってありますよね。
老人ホーム選びはそのひとつかもしれません。
この記事では、
・在宅ではそろそろ限界…
・良い環境で介護してあげたい
・退院するまでに老人ホームを探さなきゃ
といった理由で、有料老人ホームへの入居を考えているひとにむけて
「失敗する」有料老人ホームの選び方…を紹介します。
結論からいうと失敗する理由は「事前に調べない」「自分の目で確かめない」…の2つに集約されます。
この記事では「事前に調べないで失敗した例」「自分の目で確かめないで失敗した例」をそれぞれ6選ずつ…あわせて12選を解説します。
・どうやって老人ホームを見極めればよいのだろう
・老人ホーム選びに失敗したくないな
・トラブルに巻き込まれたくない
このように考えているひとはぜひご覧ください。
この記事を読むと、有料老人ホーム選びで失敗のリスクを減らすことができます。
>> 正しい「有料老人ホームの探し方・選び方」を知りたい方はこちらをどうぞ。
筆者は歯科医師です。
祖母の在宅介護を6年したあと、有料老人ホームに預けた経験があります。普段は老人ホームで介護の必要な高齢者の歯の治療をしています。
毎日 Twitter(ありがたいことに1万人以上の方にフォローしてもらっています!)で医療と介護の情報を発信しています。
【まずは6選】失敗する有料老人ホームの選び方 :事前に調べない
結論、以下のとおりです。
✔︎ 【事前に調べない失敗 6選】
①:有料老人ホームの種類を適当に選ぶ
②:老人ホームの立地・場所をよく考えずに選ぶ
③:資金をしっかり確認しない
④:介護・医療サービスを確認しない
⑤:重要事項説明書を確認しない
⑥:運営会社の経営状態をチェックしない
事前の調査が甘いまま有料老人ホームを選択してしまうと、失敗します。最悪、トラブルになるケースも。
すこし詳しく解説します。
①:有料老人ホームの種類を適当に選ぶ
老人ホームの種類を適当に選んでしまうと、失敗します。
有料老人ホームには大きく分けて「住宅型」と「介護付き」があります。
住宅型は自立度の高い(自分で日常生活のほとんどを送れる)高齢者が暮らしています。自由に生活できる反面、将来介護が必要になったとき住み続けるのが難しい施設もあります。
また費用に関しても介護付きよりも住宅型の方が低コストですが、介護サービスを使うほど費用がかかるようになります。
老人ホームの方針や体勢によってサービスが全く異なるので注意が必要です。
住宅型有料老人ホーム | 介護付き有料老人ホーム |
自立度の高い方むけ | 介護の必要な方むけ |
レクリエーションやイベントが豊富 | 認知症でも受け入れ可能なことが多い |
比較的、費用は安い | 入居一時金や月額費用は比較的高い |
介護が必要になった場合、費用が上がる | 食事や入浴、排泄の介助をしてくれる |
介護の状況で転居が必要なこともある | リハビリや医療体制が充実した所も |
✔︎ 本当に『有料老人ホーム』でよいのか
一言に老人ホームといってもたくさんの種類・類型があります。
・どこでも良いから早く探したい
・特養は順番待ちらしい
…といった状況で、あわてて有料老人ホームを申し込む人もいます。
実際には、
・要介護3以上 → 特別養護老人ホーム(略称:特養)
・リハビリ後に自宅で暮らせる可能性がある → 介護老人保健施設(略称:老健)
といった選択肢もあるので、一度検討してみてください。
老人ホームを探して選ぶ…って難しいです。
②:老人ホームの立地・場所をよく考えずに選ぶ
老人ホームの立地や場所をよく考えずに選ぶと失敗します。
老人ホームの地理的な環境はとても大事です。
・周囲の環境
・家族の通いやすさ
とくにこの2つに注意してください。
居住するひとにとって「周囲の環境」は重要です。緑が多い、見晴らしがよい…など今までの生活と共通する部分があると安心して生活できます。
また、家族にとっては「通いやすさ」も重要です。
いくら設備の整った老人ホームでも、通いにくければ、なかなか会いにいくことはできないからです。
立地でミスをした実例
・いままで自然豊かな静かな住宅街で生活していたお婆さんが、都心の老人ホームにうつって不穏になった
・料金の安さをみて、自宅から1時間かかる老人ホームへ入居させたが、行くのが億劫
環境が急に変わると、気持ちがついていかないことがあります。
立地、大事です。
③:資金をしっかり確認しない
老人ホームにかかる資金を事前にしっかり確認しないのはかなり危険です。
思った以上にお金がかかることがあるからです。
そのため、
・入居にかかる費用
・毎月かかる費用
・別途かかる可能性のある費用
は事前に把握しておきましょう。
入居にかかる費用は「入居一時金」「引っ越し代」、毎月かかる費用は「月額費用」、別途かかる費用は「医療費、理美容費、入院費」…などがあります。
これらは有料老人ホームによってことなるので、注意が必要です。
介護離職・介護破産…なんてことになりかねないので、しっかり資金計画をたてましょう。
費用で失敗した実例
・親が思った以上に長生きして貯金がつきた。(いわゆる介護破産)
・突然入院して家計を圧迫した。
・老人ホームにお金を払ず、介護離職して自宅でみることになった
資金で気になる人は下記の記事をチェックしてみてください。
④:介護・医療サービスを確認しない
老人ホームで提供される介護・医療サービスを確認しないのは、老人ホーム選びで失敗する大きな原因です。
施設で行われるサービスは様々で、特徴があります。
✔︎ 介護サービス
・食事、排泄、入浴の介助
・移動、移乗の介助
・医療機関への同行
・レクリエーションの回数、内容
・外出行事の有無
✔︎ 医療サービス
・体調を崩した時の対応
・看護師のいる時間
・協力医療機関との連携
・痰の吸引や酸素の調整ができるか
・胃ろうなどの経管栄養の受け入れ
どの程度までその有料老人ホームで対応が可能なのか、(看取りまでおこなえるか)…の確認は大切です。
医療・介護サービスで失敗した実例
・レクレーションがすくなく、母がほとんど部屋から出なくなってしまった
・胃ろうにした父の処置ができず、別の老人ホームを探すことになった
介護・医療サービスはしっかり確認しましょう。
事前に資料請求しておくことは大切です ▶︎ 介護施設検索サイトをつかって老人ホームの資料請求をしてみた【体験レビュー】
⑤:重要事項説明書を確認しない
有料老人ホームに入居するときは必ず「重要事項説明書」が渡されます。
重要事項説明書には、
・老人ホームの運営情報
・職員の配置体制
・サービス内容
・施設の設備
・費用
・契約解除について
…などの情報が記載されています。
細かい文字で書いてありますが、入居前に確認しておかないと、あとで後悔する可能性があります。
後述しますが、重要事項説明書は見学のときにもらえることもあるので、家でじっくり確認できます。
私が祖母を有料老人ホームに経験からチェックしておいた方が良いと思ったポイントは、
・月々の利用料金
・入居者の年齢層、介護度
・途中退去した場合の一時金の返金率
・医療機関との連携(祖母の場合は内科、眼科、歯科)
・苦情やトラブルの対応窓口
です。
重要事項を確認せずに失敗した実例
・退去時におもったよりも返金が少なかった
・トラブルの相談窓口がなく、解決にすすまなかった。
⑥:運営会社の経営状態をチェックしない
運営会社の経営状態を意識するしないと、トラブルに巻き込まれる可能性があります。
経営の母体が変わったり、赤字経営で潰れる可能性もあるからです。2021年、120件の老人ホームが倒産しています。
とはいえ、なかなか外から経営状態を確認することは難しいです。
ここでは外から経営状態のポイントを紹介しておきます。
・入居率
・赤字が続いていないか
・経営会社の介護に関わった期間
入居率(部屋数に対してどれだけ入居者がいるか)は経営に直結します。80%以上ないと経営圧迫している可能性があります。
申告すれば、経営会社の決算書(貸借対照表や損益計算書)を見ることができます。継続して赤字になっていないか確認しましょう。
また経営会社がどれくらい介護業界に携わっているかも重要です。最近では異業種からの新規参入も増え、適切な経営計画が成り立っていないところもあるようです。
5年ほどの経営実績は欲しいところです。
運営会社の経営実績を調べずに失敗した実例
・入居してすぐ経営会社が変わり、老人ホーム等の環境が悪化した
・老人ホームの種類が変わり、外部の介護サービスが使えなくなった
【後半6選】失敗する有料老人ホーム選び方 :自分の目でみない
実際に自分の目でみないと、失敗する可能性が高まります。
✔︎ 【自分の目で見ない失敗 6選】
⑦:有料老人ホームの中を見学しない
⑧:老人ホームのスタッフと関わらない
⑨:すでに入居しているひとの様子を確認しない
⑩:有料老人ホームで提供される食事を食べない
⑪:有料老人ホームの見学をひとりでする
⑫:気になる有料老人ホームに体験入居しない
百聞は一見にしかず…文章を読んだだけでは分からないことも多いからです。
⑦:有料老人ホームの中を見学しない
入居前の老人ホームの見学は大原則です。伝わる雰囲気は、書面や写真だけではわかりません。
具体的には、
・部屋の設備
・通路や玄関の清潔感
・部屋の収納やスペース
・手すりなどのバリアフリーの状態
・食堂など共同スペースの広さや雰囲気
などは、目で確認しないとわかりません。
老人ホームまでのアクセスはもちろん、道や街の雰囲気も確かめるようにしましょう。
雰囲気を肌で感じる…ってとても大事です。
感染症などが流行って見学が難しいときはオンラインをつかってでも確認したほうがよいです。
見学せずに失敗した実例
・面会に行ったとき、廊下にゴミが落ちていることが多い
・見学せずに決めたら、今まで使ってきた家具の入るスペースが足りなかった
⑧:老人ホームのスタッフと関わらない
スタッフの対応を知らずして、有料老人ホームに入居するのはリスクが高すぎます。
入居した後、実際に毎日接するのはスタッフだからです。連絡をとるのもスタッフです。
・スタッフの対応
・スタッフと入居者の関係
・施設長の考え
実際に現場のスタッフと話したときの雰囲気や清潔感はしっかり確認しましょう。
スタッフと入居者の関係が良ければ、入居者に笑顔が増えやすいです。食事やレクリエーションを見学してみるのはオススメです。
老人ホームは施設長の考えが反映されることが多いです。そのため、施設長の理念や考えを聞いておくのは大切です。
見学のとき、営業担当のように現場に関わる職員以外が案内してくれることがあります。
必ず施設長にも話を聞く様にしましょう。現場の職員やケアマネージャーの声も聞けるとなおヨシです。
スタッフの様子を確認せずに失敗した実例
・スタッフの電話対応が適当すぎる
・入居した母が、スタッフや施設長のことを怖がっている
⑨:すでに入居している利用者の様子を確認しない
新規の老人ホームでない限り、すでに入居している利用者さんがいます。
この方々の様子を確認しないと、入居する本人に悪影響がでる可能性があります。
なぜなら入居した本人はスタッフだけでなく他の入居者と関わることになるからです。
とくに、
・年齢層
・介護度
…は、実際の目で見つつ見学する担当者に聞いてみましょう。
これは重要事項説明書からも確認できますが、実際に目で見ておくと信憑性が増します。
すでに入居している利用者の様子を確認しないで失敗した実例
・一人だけ年齢層が違うため孤独感が強い
・元気な母が入居した施設の他の利用者が重度の認知症ばかりで話し相手がいない
⑩:有料老人ホームで提供される食事を食べない
実際に食事を食べてみないと、入居者本人の健康や栄養状態に関わります。
食事は毎日食べるものであり、見た目や美味しさは生きる喜びでもあるからです。
味付け、固さ…だけでなく、将来病気などで食べれなくなった時のために「食事形態の細かさ」までチェックしておきましょう。
見学するとき、事前に試食させてもらえることは多いです。
また、持ち込みや好みの食事にどれだけ対応できるかも事前に確認しておくとベストです。
食事で失敗した実例(入居後の感想)
・とろみの具合が毎回違って食べにくい
・食事を食べたくない。まるでゴムを食べているみたいだ
⑪:有料老人ホームの見学をひとりでする
老人ホームの見学に一人で行くのは失敗するリスクが高まります。なぜなら見落としや客観的な視点が欠けてしまうからです。
なるべくなら二人以上で行くようにしましょう。
その場合親族で行くことが多いと思いますが、オススメは友人と行くこと…です。
完全な第三者目線でものを見ることができるので、冷静な意見をもらえることも多いです。
関連記事:【必見:75項目】老人ホームの見学で使えるチェックリスト【モレなし】
✔︎ 見学のあとに重要事項説明書をもらう
見学時に重要事項説明書をもらえることがあるので、担当者にきいてみましょう。
その場では読みきれないので、持ち帰ってじっくり確認するのがオススメです。
参考記事:【老人ホームの見学】見学者が注意すべきポイント 11選【シンプル】
⑫:気になる有料老人ホームに体験入居しない
体験入居しないということも、失敗する老人ホーム選びの一つです。
実際の生活をわからずに入居する…ということはリスクが高いです。
・スタッフの対応
・入居者の様子
・設備の使い勝手
・食事の相性
・レクリエーションの様子
これらを経験することで、何か引っかかる点がないか確認することができます。
期間としては一泊二日から一週間程度可能な老人ホームが多いです。
実際に入居してしまった場合でも、有料老人ホームは90日家のクーリングオフがあるので、この期間を体験とすることも一つの方法です。
体験入居せずに失敗した実例
・日中の日当たりが悪かった
・夜中の音が気になって眠れなかった
失敗しない老人ホーム選びは比較が大事【最悪のトラブルを回避する】
今回の記事では『失敗する老人ホームの選び方』を全部で12選、紹介しました。
✔︎ 【12選】 失敗する老人ホームの選び方
①:有料老人ホームの種類を適当に選ぶ
②:立地・場所をよく考えずに選ぶ
③:資金をしっかり確認しない
④:介護・医療サービスを確認しない
⑤:重要事項説明書を確認しない
⑥:運営会社の経営状態をチェックしない
⑦:有料老人ホームの中を見学しない
⑧:老人ホームのスタッフと関わらない
⑨:すでに入居している利用者の様子を確認しない
⑩:有料老人ホームで提供される食事を食べない
⑪:有料老人ホームの見学をひとりでする
⑫:気になる有料老人ホームに体験入居しない
このように、失敗する老人ホーム選びは「事前に調べない」「自分の目で確認しない」…のどちらかが原因です。
事前にしっかりと確認することで未来に起こるトラブルを回避することができます。見学は納得いくまで複数回おこないましょう。
そして最後は、少し面倒ですが、
他の老人ホームと比較する
ことを忘れないようにしてください。
少なくとも3つは比較するのがオススメです。
比較することで、メリットや問題点がブラッシュアップされ、後悔するリスクが大幅下がります。
老人ホーム選びは実際に入居する人にとっても、それを支える家族にとっても、人生に直結するとても大切なことです。
失敗する事例さえつかめば、後は素敵な未来が待つだけです。ぜひ行動してみてください。
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