有料老人ホームにかかる費用が気になるひと「有料老人ホームに入るとき、いくらあれば大丈夫なんだろう…。初期費用や毎月の料金の目安を教えてほしい。簡単な内訳や他の老人ホームとの比較も知りたいな。なるべく安く入れるといいのだけど…」
本記事ではこういった疑問にこたえます。
・特養があいていない
・在宅介護で限界を迎えている
・急に親の介護が必要になってしまった
・世話になった親に良い暮らしをさせてあげたい
このような思いから、有料老人ホームを探し始めた人が「そもそも有料老人ホームって結局いくらあれば大丈夫なんだろう」…と悩むケースがあります。
私は祖母の在宅介護を6年したあとに有料老人ホームへ預けました。そのときまず不安になったことはお金の問題です。
この記事では、有料老人ホームへの入所するときに「一体いくらあれば安心して暮らせるのか」「かかる費用の目安と内訳」を体験談をまじえつつ解説します。
>> 「有料老人ホームの探し方・選び方」を知りたい方はこちら
この記事を読むと、有料老人ホームへの入所を考えている人の「お金の不安」がクリアになります。
筆者は歯科医師です。
在宅介護6年の経験を生かして、老人ホームで介護の必要な高齢者の歯の治療をしています。
毎日 Twitter(ありがたいことに1万人以上の方にフォローしてもらっています!)で医療と介護の情報を発信しています。
■ もくじ
有料老人ホームに入るならいくらあれば大丈夫?【結論:3,950万円です】
結論からいうと、3,950万円の目処があれば安心といえます。
3,950万円の根拠【相場をもとに考える】
有料老人ホームに入るには…
①:月額利用料
②:一時費用
③:入居一時金
の3つを考える必要があります。
①:月額利用料の全国平均は22万円
月額利用料とは家賃や管理費、食費です。
②:一時費用は多めに毎月8万円で見積もる
一時費用とは光熱費や理美容費、医療費、入院費などで老人ホームにより異なります。
③:入居一時金の全国平均は350万円
入居一時金とは入居したときに払う費用のことです。前払い家賃とも呼ばれます。
(① + ② + ③)を10年分で考える
月額利用料(①)と一時費用(②)の合計は毎月30万円。つまり年間で360万円(30万 × 12ヶ月)。
ここで、介護に必要な期間を10年と考えます。
平均寿命(本当の寿命=84歳)から健康寿命(体が元気な年齢=74歳)をひくと、約10年になるからです。
つまり10年で①と②の合計は、360万 × 10(年)なので
3,600万円。 ←(①+②)の10年分
ここにさらに入居一時金(③)の350万円を加えると、「3,600万(月額利用料10年分)+ 350万」となり、
3,950万円(= ① + ② + ③ )
という結論になります。
✔︎ 有料老人ホームでも種類がある
有料老人ホームには大きく介護付きタイプと自立タイプがあります。
参考:有料老人ホームとは?【どんなところ?/ 祖母を預けた孫が解説します】
今回は安心な金額を出すため、費用のかかる「介護付きタイプの有料老人ホーム」をベースに考えています。
(これらのデータは LIFULL介護 ・ みんなの介護 を参考に算出しています)
いま手元にすべての金額をもっている必要はない
3,950万円がいま手元にある必要はありません。
なぜなら、すぐに全額必要なわけではないからです。
支給される年金や貯金などなどの資産を含めてトータルで払っていけるなら安心…ということです。
たとえば、年金が毎月で10万円あるなら年間120万、10年間で1,200万円を持っていることになります。
そのため、3,950 − 1,200 = 2,750万円…が安全のための資金となります。
✔︎ 特養(特別養護老人ホーム)との比較
よく有料老人ホームと比較される特別養護老人ホーム。介護度3以上の人が入居できます。
月額費用は要介護度や居室の種類によって違いますが、おおよそ7~15万円程度です。
なにより入居一時金は 0 円なので費用をかなり抑えることができます。
エリアによっては数年待ち…のところもあります。
祖母の場合【持ち出しは毎月数万円でした】
祖母は在宅介護から有料老人ホームに入居しました。
都心のど真ん中ではなく、やや地方の有料老人ホームにお世話なり、月額負担は17万円。入居一時金は300万円でした。
すでに祖父はなくなっており、その状態で年金が年間で200万ほどあったため、月額負担をほぼ賄うことができました。(昔の年金制度…すごい)
参考:【結論:エンディングノート】認知症の祖母の資金を事前に確認できた話
幸い、入居一時金と賄えるくらいの貯金を祖父が残してくれたこともあり、毎月の負担は医療費や雑費で数万円でした。
その後、認知症がかなり進んでしまい、数年を有料老人ホームで生活したあと、特別養護老人ホームにうつることができました。
このとき入居一時金が約半分の150万円ほど戻ってきました。
そのあとは特別擁護老人ホームで亡くなるまでの5年ほど過ごしますが、家族もそして本人もきっと恵まれている環境でした。
今の団塊世代は年金の額もかなり削られているので、資産だけでまかなうのが難しい家族もとても多いと思います。
費用が高い…と思ったら「中央値」で考える
有料老人ホームにかかる費用は基本的に高いです。ですがあっさりあきらめる必要はありません。
平均値だけでは判断できないからです。
平均値はデータの中に一つだけ飛びぬけて高い値があると、それだけで平均値が跳ね上がる…という性質があります。
そのため「中央値でかんがえる」…ということも大切です。
中央値とは「データを大きい順から小さい順に並べた時のちょうど真ん中の値」。中央値が現実的な値であることも多いです。
紹介したように入居一時金の平均は350万です。ですが、中央値はなんと40万円です。
月額利用料の平均は22万ですが、中央値は19万円。
必ずしも平均値にとらわれる必要はありません。
とはいえ、資金計画を甘く見積もりすぎないように気をつけてください。
有料老人ホームにかかる費用には大きな差がある
有料老人ホームはかかる費用に大きな差がでます。
上をみればキリがない
地域よって料金の差はある
入居一時金が桁外れな高級老人ホームもあれば、ゼロ円というホームもあります。
都会なのか地方なのか…でも差があります。
高級有料老人ホームは億越えも…
高級有料老人ホームへ入居一時期が億越え!…何ていうところもあります。
基本的に高額になればなるほど、設備やサービスが手厚くなっていきます。
贅沢な空間設定
充実した介護体制
自然に囲まれた住環境
ホスピタリティあふれるサービス
などが挙げられます。
✔︎ 実例
こちらの有料老人ホームは入居一時金が最大で11,580万円(1億1,580万円)です。
実際、私も高級有料老人ホームに歯の治療に伺うことがありますが、入居金が1億円をこえてくる有料老人ホームはふつうにホテルみたいです。
有料老人ホームの費用には地域差あり【相場がちがう】
有料老人ホームにかかる費用は地域差も大きいです。
基本的には都心に行けば行くほど高額で、地方になるほどリーズナブルです。
土地の価格・物価・利便性などが関わってきますね。
✔︎ 有料老人ホームの月額費用が高い都道府県
1位 | 東京 | 26万円 |
2位 | 兵庫 | 23万円 |
3位 | 神奈川 | 22万円 |
4位 | 愛知 | 20.6万円 |
5位 | 宮城 | 20万円 |
✔︎ 有料老人ホームの月額費用が安い都道府県
1位 | 佐賀 | 10.9万円 |
2位 | 三重 | 11万円 |
3位 | 和歌山 | 11.5万円 |
4位 | 福島 | 12.1万円 |
5位 | 石川 | 12.5万円 |
実際に同じような築年・部屋数でも、地方と都心では全く費用が違います。
✔︎ 地方の有料老人ホーム(築15年) 入居一時金は20万円・月額費用は13.6万円
✔︎ 都心の有料老人ホーム(築15年) 入居一時金は300万円〜・月額費用は31.9万円〜
入居一時金が無料(0円)の有料老人ホームも…
一方で入居一時金がゼロ円の有料老人ホームもあります。
正確にはゼロ円のプランを持っている有料老人ホームです。
初期費用を安く抑えたい人のためのプランです。
想定される入居期間が短い人
一時的な入居を希望される人
このような方がよく利用しているイメージです。
注意点としては、毎月の支払額が高くなる…こと。
当初の予定よりも入居期間が長くなってしまうと、資金が尽きてしまう可能性もあります。
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まとめ:有料老人ホームの費用は高い【でもあきらめる必要はない】
今回は有料老人ホームに入るにはいくら必要なのか…を解説しました。
・有料老人ホームで10年暮らすと3,950万円かかる
・いますぐすべての金額を用意する必要はない
・平均値だけでなく中央値でも考える
・有料老人ホームの費用は地域差がある
・入居一時金が無料で入れる有料老人ホームもある
紹介したように、有料老人ホームでは10年間生活すると約4,000万円かかります。
とはいえこれはあくまで参考基準であって、希望する設備や住んでいる地域によって大きな差があります。
実際に入居する人にとっても、 それを支える家族にとっても、幸せに暮らすためにお金の問題は切っても切り離せません。
仕事柄、有料老人ホームに出入りすることが多いのですが、そこには20年以上も暮らしているおじいちゃんおばあちゃんがいます。
純粋なお金持ちならいいのですが、介護の期間は予測ができません。予想外の長生きは家族の資産を圧迫する可能性だってあります。
有料老人ホームの利用は「数千万円」が動く大事な話です。
生活とのバランスをとりつつ、あくまで安全なラインを目指してくださいね。
資金計画の参考になれば嬉しいです。
今回は以上です。
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